「現状を定義する言葉が足りない」

今、下北沢の開発問題の状況はとっても見えづらいものになっていると思う。
このブログをご覧の方の中には現状を知りたい方が多いと思うので、一度整理してみようと思う。

下北沢の再開発は、道路計画の補助54号線、駅前ロータリーの区画街路10号線、高層化・高密度化(ようするにビル建設)を促す地区計画、小田急線の地下化の4つの事業がワンセットになっている。そのうち、小田急線の地下化は2004年に、そのほかは2006年に認可がおりている。(厳密に言うと、地区計画は都市計画決定)

いま下北沢の南口ドトールがなくなって白いフェンスでおおわれている部分とか、線路のまわりで行われている大掛かりな工事は、全部小田急線の地下化工事である。
(この工事を見て、「シモキタの道路建設もはじまっちゃったのね」と思ってる人が多いので、要注意です。道路建設に関しては、用地買収もまだ始まっていない。)

そのほかに、下北沢の広いエリアでぽつぽつとビルの工事が行われていることにお気づきの方も多いと思う。その工事は、建築基準を緩和する地区計画が計画決定したから始まったものだ。

運動の側は、小田急線の地下化には反対していない。
一方で、テナント料の高騰を招いて結果的に個人商店の新規参入を妨げてしまう高密度化にはおおむね反対の人が多い。

つまり、「大型道路や高層ビルがもってのほかなのはもちろんなのだけど、地下化で街の風景が変わることは前提条件。その中で下北沢のよさを最大限に残していくためにどうすればいいか。」を考えなければならないという状況に、運動は置かれているのです。


小田急線が地下化したら、シモキタの街には長大な線路跡地ができることになる。
今、その利用の方法についてのアイデア募集をするコンペのようなものを世田谷区が開始しており、アイデアを整理する役割、とされる「上部利用検討委員会」も立ち上がっている。

というふうに書くと、「おっ ついに世田谷区も広く意見をきくようになったのかな」と思う方もいるかもしれない。
でもなぜかこのアイデア募集、募集要項にこんな言葉が書いてある。
「鉄道事業者施設(駅舎等)および都市計画決定している都市計画施設、ならびに関係機関と協議し位置、規模などを定めている駅前広場についてはアイデア募集の対象外となります」

ようするに、反対の声が多く集まっている広大な駅前ロータリーや補助54号線の計画についてはとうぜん文句が言えない、だけではなく、シモキタの街の姿を大きく変える駅舎のデザインに意見することもできないのだ。
さらに、元代表の金子さんのブログに詳しいように、駅の出入り口の場所すら明らかにされていない。
このやり方で、本当に街の将来にとって有効な意見を広く集めることが、できるんだろうか。

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ところで、表題は、セイブのメンバーの木村君がたまに口にするせりふ。

運動にかかわっている人たちは、いつも現状をわかりやすく説明する言葉を作ろうとしてきた。
なぜなら、その言葉によって、ほかのメンバーたちが現状を理解することができて、目標をゆるやかに共有してアクションを起こすことができるからだ。
この「ストーリー作り」がうまくいくと、運動は大きな力を発揮することができると思う。

「現状を定義する言葉が足りない」というせりふを、久しぶりに木村君から聞いた。
たしかに、上に説明したような複雑ないまの状況の中で、運動の方向性をひとつにまとめるような「大きな物語」が運動に存在してないように思う。

たとえば、今回みたいなイベントをやって、一年に一度下北沢の問題の存在感をアピールすることが効果的と考えている私のような人もいれば、訴訟のために運動を最大限に盛り上げることが必要と考えている人、道路はなかなかできないだろうから経済的にも疲弊している街のテナントの問題を解決することが必要だと思っている人、跡地利用についていいプランを作ってとにかく区にぶつけることが必要だと考えている人など、さまざまな考え方が、運動に渦巻いていると思う。


ところで、30日の最終シンポジウムは、「シモキタ・クラッシュ―再開発反対運動の多様性」だ。
このシンポは、「Save the 下北沢」のメンバー有志(私を含めて)が企画を立てたものだ。

「何が有効なアクションか」の考え方に、その人の立場とか特性、嗜好は大きく左右している。
たとえば単純な言い方だが、ファミリーでずっと下北沢に住んでいる住民の人は、町内会やPTAを巻き込んで住民を出来るだけ味方にすることが重要だ、と考えていたり、ということ。

下北沢の運動の特徴は、住民っぽい住民・商業者・来街者(街の愛好者)といったさまざまな立場の人間が一緒になって、運動を作ってきたことだと思う。
(居住の有無だけではなく、職業的にもバラバラだ。)
だからこそ、多くの人が目標を共有できるような「現状を定義する言葉」は、とても重要な役割をもってきたと思う。

30日のシンポは、運動の中から住民っぽい住民・30年以上店を開いている商業者・街の愛好者・区議会議員というばらばらな立場の人が出演して、それぞれにいまの運動・いまの街がどのように見えているのかをあえて公開の場で議論するという内容だ。

司会は、下北沢の問題を長い間ウォッチしてくださってきた、社会学者の北田暁大さんが引き受けてくださることになった。
そこに、都市計画の専門家の福川裕一さんが加わって、議論を引き締めてくださる。
(私も「街の愛好者」的立場の代表として、議論に参加させていただくことになっている)

「現状を定義する言葉」を少しでも編み出すことを目指して、このシンポに望みたいと思っている。

8月30日(土)19:00~20:30
「シモキタ・クラッシュ」― 再開発反対運動の多様性
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by shimo_voice | 2008-08-26 15:22


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